新NISAで含み損が出たら?暴落時にやってはいけない3つの行動

「含み損が膨らんでいく画面を見るのが怖い」 「一回売って、安くなってから買い直した方がいいんじゃ...」

新NISAで投資を始めた人の多くが、今まさにこの葛藤を抱えているんじゃないだろうか。

SNSを開けば「含み損30万」「NISA売った方がいい?」みたいな投稿が飛び交っている。 Xでは「S&P500暴落で含み損。NISA売った方がいい?」といった投稿が大きな反響を呼んでいる。 多くの人が同じ不安を感じているのがわかる。

でも先に結論を言うと、その「売って買い戻す」が実は一番やってはいけない行動だったりする。

S&P500暴落で「含み損」に怯える投資初心者へ

まず現状を整理しておこう。

金融庁のNISA利用状況調査によると、2025年6月末時点でNISA口座数は2,696万口座に達した。 累計買付額は63兆円で、政府目標の56兆円を前倒しで達成している。 18歳以上の約4人に1人がNISA口座を持っている計算だ。

そして多くの人がeMAXIS Slim米国株式(S&P500)に投資している。 この投信は2026年1月に純資産総額10兆円を突破。 国内投信初の大台に乗った。

それだけの人がS&P500に集中しているからこそ、調整局面が来ると一気に不安が広がる。 S&P500は2025年通年で+16.39%と上昇した。 ただ、2023年の+24.23%、2024年の+23.31%からは減速している。 2026年に入ってからは調整局面に突入し、含み損を抱える人が急増しているのが現状だ。

僕自身、iDeCoで暴落を何度も経験した上で今この記事を書いている。 暴落時にやってはいけない3つの行動と、じゃあ何をすればいいのかをデータで解説していく。

含み損で不安な人、積立をやめようか迷っている人にこそ読んでほしい。

投資の不安とストレスを感じる人のイメージ Photo by Vitaly Gariev on Unsplash

新NISAの含み損でやってはいけない行動(1)「売って安くなったら買い直す」

「一旦売って、底値で買い直せばいいじゃん」——この考え、めちゃくちゃ気持ちはわかる。 でも、データを見るとこれが最も損する行動だとはっきりしている。

投資の名著『敗者のゲーム』の著者チャールズ・エリス氏はこう述べている。

「稲妻が輝く瞬間に市場に居合わせなければならない」

S&P500の過去75年間のデータを分析すると、リターンの大部分はたった全体の7%の月に達成されている。

具体的な数字を見てみよう。 『敗者のゲーム』(旧版)によると、1980年から2008年のS&P500のリターンは年率11.1%だった。 ところが、この期間のベスト30日を逃しただけでリターンは5.5%に半減する。

たった30日。28年間のうちのたった30日を逃すだけで、リターンが半分になる。

しかも厄介なのは、この「ベストデー」が暴落直後に集中する傾向がある点だ。 2020年3月のコロナショック直後にも歴史的な急上昇が起きている。 2025年4月のトランプ関税ショック直後も同様だった。

つまり「売って市場から離れる」と、最大の回復チャンスを逃す確率が極めて高い

底値を正確に当てるのはプロでも困難。 これは金融の専門家たちの共通見解だ。 「売って買い戻す」は「底値を正確に2回当てる」ギャンブルに他ならない。

暴落時にやってはいけない行動(2)「怖いから積立をストップする」

売るのがダメなら、「とりあえず積立を止めて様子を見よう」と考える人も多い。 気持ちはわかるけど、これもかなりもったいない行動なんだよね。

なぜなら、暴落時こそドルコスト平均法の威力が発揮されるタイミングだから。

ドルコスト平均法とは、毎月一定額を積み立てる投資手法のこと。 株価が高いときは少ない口数を、安いときは多くの口数を自動的に買える。

大和証券のシミュレーションがわかりやすい。 株価が1,000円→200円→500円と推移した場合、一括投資なら資産は半減する。 でもドルコスト平均法で積み立てていたら、約13%のプラスになる。

暴落時に安い価格でたくさんの口数を仕込めるから、回復局面でリターンが大きくなる仕組みだ。

研究データもこれを裏付けている。 一括投資では5年後に資産が20%減少する確率が約56%ある。 一方、ドルコスト平均法では約27%に低下する。 リスクがほぼ半分になるわけだ。

さらに、金融庁のNISAガイドブックのデータが心強い。 国内外の株式・債券に分散した積立投資を20年間続けた場合、元本割れの頻度はゼロ。 100万円が186万〜331万円に成長するという試算結果が出ている。

僕自身の経験で言うと、iDeCoを月23,000円ずつコツコツ積み立てて、200万円が550万円まで成長した。 途中で相場が大きく下がった時期も何度かあった。 でも積立を止めなかったからこそ今の結果がある。 口座残高が足りず引き落としがうまくいかなかった月もあったけど、続けることに意味があった。

あのとき「怖いから止めよう」と思っていたら、今の550万円はなかったと思う。

コツコツ積み立てる貯金のイメージ Photo by insung yoon on Unsplash

やってはいけない行動(3)「制度のルールを知らないまま売る」

積立を続ける重要性がわかったところで、もう1つ押さえておきたいのが新NISA特有の制度だ。 新NISAには含み損での売却が特に不利になる3つの仕組みがある。

損益通算ができない

通常の課税口座なら、損失が出ても他の利益と相殺できる。 でもNISA口座では、損失を課税口座の利益と損益通算することが一切できない。 翌年以降への繰越控除も不可だ。 含み損で売却すると、損失だけが確定して税制上のメリットはゼロになる。

非課税枠は「簿価」で翌年に復活する

売却すると非課税保有限度額が復活する。 ただし、これは取得価格(簿価)ベースでの復活だ。 たとえば取得額100万円の投信が150万円に値上がりして売っても、復活する枠は100万円だけ。 含み損の状態で売ると、枠の目減りにつながる可能性がある。

年間投資枠360万円は同年内に復活しない

売ったからといって、同じ年にその枠で買い直すことはできない。 「売って買い直す」は制度的にもスムーズにいかない設計になっている。

そもそも新NISAの非課税保有期間は無期限。 焦って売る必要はどこにもない。

制度の詳細は楽天証券のNISAルール解説ページが網羅的でわかりやすい。 気になる人はチェックしてみてほしい。

暴落時に積立投資家がやるべきことはシンプル

ここまで「やってはいけないこと」を3つ見てきた。 じゃあ結局、暴落時に何をすればいいのか。

答えはシンプルで、基本的には**「何もしない」**が正解だ。

積立設定はそのまま放置する

証券会社のアプリを開いて含み損の数字を見ると、どうしても感情が揺さぶられる。 マネーフォワードの調査でも、長期投資家が失敗する最大の原因はパニック売りだと指摘されている。 だから、むしろ証券口座を見る頻度を意識的に減らすのが大事。 具体的にはアプリの通知をオフにするだけでも心理的な負担はかなり軽くなる。

自分のリスク許容度を再確認する

含み損で夜も眠れないなら、それはリスクの取りすぎかもしれない。 毎月の積立額を無理のない範囲に見直すのは全然あり。 たとえば月5万円の積立で生活がきついなら、月3万円に下げるとか。 大事なのは「やめない」こと。金額を減らしてでも続けることに価値がある。

余裕があればスポット買いも選択肢

暴落は「安く買えるチャンス」でもある。 ただし、スポット買いを検討するなら条件がある。

  • 生活防衛資金(最低6ヶ月分の生活費)を確保済みであること
  • 使い道の決まっていない余剰資金の範囲内であること
  • 一度に全額を投じず、数回に分けて投入すること

生活防衛資金に手を出すのは絶対にNG。 あくまで「余裕のあるお金」の範囲でやるのがポイントだ。

僕は日本の成長に疑問を持って海外投信に切り替えた経験がある。 暴落って、自分の投資方針を冷静に見直すいい機会にもなるんだよね。

ただし、S&P500「だけ」に賭けるリスクも知っておく

暴落時の正しい対応がわかったところで、もう一歩踏み込んで考えたいことがある。 それは**「S&P500だけに集中投資していて本当に大丈夫なのか」**という問題だ。

フランクリン・テンプルトンの分析によると、2023年末時点でS&P500の上位10銘柄が全体の**30.9%**を占めている。 ITバブルのピークだった1999年末の25.4%を超える水準で、銘柄の集中度がかなり高い。

さらに12ヶ月先の予想PER(株価収益率)は約21.7倍。 過去平均の16.2倍を大きく上回っている。 割高感があるのは事実で、米国株下落とドル安円高が同時に進む「ダブルパンチ」のリスクもある。

ただ、「だからS&P500を売れ」という話ではない。 S&P500の積立を続けつつも、全世界株インデックスへの分散やGPIF型のポートフォリオも選択肢として頭に入れておく価値はあると思っている。

なお、2026年のS&P500について各社はEPS成長率+13.8%を予想しており、長期的には回復基調が見込まれている。 ただし予測はあくまで予測なので、過信は禁物だ。

新NISAの制度改正については、以前書いた記事「2026年NISA大改正まとめ」で詳しく解説している。 あわせて読んでみてほしい。

まとめ:新NISAの含み損は「通過点」に過ぎない

この記事のポイントをまとめておく。

  • 「売って買い戻す」が最悪手:ベスト30日を逃すだけでリターンは半減する。底値を当てるのはプロでも無理
  • 積立を止めない:ドルコスト平均法は暴落時にこそ威力を発揮する。20年続ければ元本割れはゼロ
  • 新NISAの制度を理解する:損益通算不可・非課税枠は簿価復活・年内再投資不可。含み損での売却は制度面でも不利
  • やるべきことはシンプル:積立を続ける。口座を見すぎない。不安なら金額を見直すだけでOK

暴落時に最もやってはいけないのは、感情に任せて売ること。 長期積立投資の原則を守れば、含み損は通過点に過ぎない。

金融庁のデータが示すとおり、20年間の積立投資で元本割れの頻度はゼロだ。 今日やるべきことは3つだけ。

  • 証券口座の通知をオフにする
  • 積立設定が継続中か確認する
  • 不安なら積立額を見直す(やめるのではなく減らす)

含み損の画面を閉じて、コーヒーでも飲もう。 数年後、「あのとき売らなくてよかった」と思えるはずだから。

リラックスしてコーヒーを楽しむイメージ Photo by Polina Kuzovkova on Unsplash

この記事が参考になったら「スキ」を押してもらえると嬉しいです。 新NISAや資産形成について、僕自身の経験も交えながら発信しています。

お子さんがいる方は、「こどもNISA完全ガイド」の記事もぜひチェックしてみてください。

参考リンク